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[和文誌] 松井、大石、椎村、井上、佐藤(遺伝情報研究部門)が、日本心脈管作動物質学会誌『血管(Jpn J Circ Res)』に総説を執筆しました。

2025年11月21日に刊行された日本心脈管作動物質学会誌『血管Jpn J Circ Res』(Vol.48 No.3)において、松井一真大石佳苗椎村祐樹井上泰良佐藤貴弘が「能動的低代謝“トーパー”を制御する心脈管作動物質:新たな循環制御の可能性」を執筆しました。

本稿では、飢餓や寒冷といった厳しい環境に適応するため、動物が自ら代謝を深く抑える「トーパー」という現象について、これまでに明らかになってきた生理学的な仕組みをまとめています。近年、この特異な低代謝状態には、体温、血圧、心拍の調節に関わる複数のホルモンが関与していることが分かってきました。

とりわけ、本研究で中心的に扱っているグレリンは、当研究部門の客員教授である児島将康博士らが世界で初めて発見したホルモンです。私たちの研究では、このグレリンが絶食時に起こる体温低下や血圧の変化を支える重要な役割を果たすことを動物実験により示してきました。本稿では、こうした最新の知見を紹介するとともに、「動物がどのようにして代謝を安全に低下させ、限られたエネルギーで生き延びるのか」という生命現象の巧みさを解説しています。

さらに、トーパーの理解が将来どのような研究領域へつながりうるかについても触れています。たとえば、臓器の負担を減らす考え方や、低温環境で体を保護する仕組みの応用など、今はまだ基礎研究の段階にありますが、将来的に医学へ貢献しうる未来の展望として紹介しています。


松井一真,大石佳苗,椎村祐樹,井上泰良,佐藤貴弘

能動的低代謝“トーパー”を制御する心脈管作動物質:新たな循環制御の可能性

『血管(Jpn J Circ Res)』48巻3号:119–127, 2025年